成功するためのプロジェクトマネジメント~要件定義フェーズ~

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前回はプロジェクトを以下のフェーズに分け、それぞれのフェーズごとに明確なゴール目標を定めるというお話をお伝えしました。

記事をお読みいただいていない方は下記の記事を先にお読みいただいてからこちらの記事を進んでいただくことをオススメします。
成功するためのプロジェクトマネジメント~計画フェーズ~

今回は「要件定義フェーズ」についてお伝えします。

要件定義フェーズとは

計画フェーズで作成したプロジェクト計画書をベースに、実現したい業務に必要な機能要件や技術要件をまとめていきます。

ここで出てくる機能要件や技術要件に合わせて、次フェーズ以降を実施するベンダーの選定を進めていきます。

要件定義フェーズでは、業務を理解し、問題点を整理し、それらの問題を解決するための機能や技術要件をまとめていくため、非常に高度なスキルを必要とします。

設計・開発フェーズを得意とする担当者が要件定義を十分に行わずに設計・開発に入ってしまったり、技術力のない担当者が技術要件を十分にまとめずに設計・開発に入ってしまうことで、後工程に入ってから「こんなはずじゃなかった」という事態を招いてしまうことはよくあります。

担当者は自分の強みと弱みを理解し、自分の弱みを補ってくれるパートナーを見つけることがプロジェクト成功のために必要です。

プロジェクト計画書の説明

メンバー全員でのキックオフ

要件定義フェーズで最初に行うことは、プロジェクト計画書の内容をプロジェクトメンバー全員に共有することです。

ここで重要なことは、プロジェクトマネージャーが誰であるかを全員に認識してもらうことです。

また、プロジェクトの背景、目的、体制図や成果物、スケジュールをきちんと説明することで、メンバーが感じる不安や疑問を早期に払拭することも重要です。メール等で共有してしまうことも簡単です。ただ、メールではメンバーの表情や感情の変化、人間関係などを把握することはできません。

できる限りメンバーを集めて、意思の疎通や現状把握を行いましょう。

チームリーダー、ステアリングコミッティメンバーとの意思疎通

チームリーダーやステアリングコミッティメンバーとの意思の疎通も重要です。

それらのメンバーだけで別途集まって、体制図の共有やそれぞれの役割、今後についての説明等を行うことも重要です。とくにステアリングコミッティには各部署の重要な役割を担っている方々が就くことが多く、なかなか全メンバーが集まることができません。

全メンバーが揃う機会を有効活用しましょう。

全体指揮・監視とリスクマネジメント

全体指揮・監視とリスクマネジメント_イメージ

プロジェクトマネージャーが意識すべきことは1つの作業そのものではなく、その作業の遅延やトラブルが全体にどれくらいの影響を及ぼすかを把握することです。

正しい情報を早く入手すること、つねに全体像をつかめる状況を作っておくことが重要です。

1つ1つの作業や打合せは各チームに任せ、全体像をつかむこと、未来に起こるであろうことを予測すること、に注力しましょう。

ベンダー選定

ベンダー選定はとても重要です。

この段階でプロジェクトの運命が決まってしまう、といっても過言ではありません。

プロジェクト計画書の段階でシステムの全体像や主要な機能要件、技術要件が見えている場合、ベンダー選定を早期に開始することができます。

要件が見えていない場合でも想定されるいくつかのシナリオを用意することができれば、そのシナリオに合わせたベンダー選定を開始することができます。

  • 既存のパッケージやサービスをそのまま利用するのか
  • 既存のパッケージやサービスにカスタマイズをして自社に合わせて再構築するのか
  • 1からシステムを構築するのか

といったことを、予算やスケジュールを加味しながら検討していく必要があります。

ベンダーにはそれぞれ得意領域があります。得意領域でなくても案件は可能な限り受注したいと考えるベンダーもいます。

プロジェクトで構築したいシステムを実現してくれる理想的なベンダーを見つけるのはとても大変です。

その最大の理由は成果物がすぐには出てこないからです。

プロジェクト計画にあったベンダーを選定する際にはベンダー側が抱える事情もよくヒアリングしておく必要があります。一般的にはRFPを作成してそれらを基準に業者選定を進めていきます。RFPの質が低いと、正しい選定を行えない可能性があります。

ステークホルダー対応

スポンサーや経営層が、突然プロジェクト計画にない要望を言ってくるケースがあります。

それらに対する対応はどうすればよいのでしょうか?

Yesが必要なケースもありますし、ときには断固Noを返す必要があるケースもあります。いずれにせよ、プロジェクト全体に対する影響をきちんと説明し、納得していただく必要があります。

そういったことが頻発しないよう、予めスポンサーや経営層との関係性を築いておくことも重要な業務です。

変更対応

プロジェクトを進めていく中で、急な計画変更や計画自体の不備による計画見直しが必要になるケースがあります。

プロジェクト全体の影響を考えて対応が必要なのはもちろんですが、関係各所への周知を徹底することが重要です。スポンサーや経営層への説明および承認、プロジェクトメンバー全体への説明等です。

計画変更を知らないまま作業を進めてしまい、あとで多大なリカバリーコストが発生するような事態は絶対に避けなければなりません

次フェーズに向けた準備

要件定義書を作成し、ステアリングコミッティの承認を得る必要があります。

当初のプロジェクト計画の修正が必要になるケースもあるので、このタイミングでプロジェクト計画全体との整合性を確認する作業も必要です。

また、次フェーズからいよいよ本格的に設計・開発を行っていきます。人員の管理や予算管理、プロジェクト全体のルール整備などやるべきことが多くなります。

プロジェクトの規模によってはこの段階でPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を設置して、これらの全体管理を行うことも考える必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

各担当者はどうしても自分の担当領域を中心に考えがちです。そのため、自分の都合でプロジェクトを進めようとします。

場合によっては利害関係が合致せず、トラブルを引き起こしたりする事態も考えられます。前半の工程でその問題を発見できればリカバリーコストは最小限に抑えることが可能です。

要件定義フェーズを担当される方は「木を見て森を見ず」の状況にならないよう、いつもプロジェクトを俯瞰的に眺めている意識を持つこと、気になったこと、ネガティブな問題を後回しにせず、早期解決を図ることがプロジェクト全体の成功に必要な要素なのです。